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赤ちゃんの育ち方

赤ちゃんとママへ〜小児科医からのメッセージ〜

聞いてる

 生後十ヵ月頃になると、赤ちゃんは大人の言葉をじっと聞いている。もちろん具体的にわかるわけではないが、その場の雰囲気や、言葉の抑揚などを動物的に感じとっているのだろう。さらに一歳半を過ぎると、二つ三つの発語しかなくても、大人がしゃべることをかなり理解できるようになる。
 その証拠に、子どもの前で愚痴を言ったり、心配事を話したりしていると、何となくおとなしくなったり、まつわりついてきたりする。一番好きなお母さんの気持ちを肌で感じて、不安になるのかもしれない。

 診察のときも、子どもは、私たち医師とお母さんとの会話を、自分のこととして聞き耳をたてている。不穏な空気を察するとぐずりだすし、反対に穏やかにやりとりをしていると、診察がスムーズに運んだりする。
 ときには、たった一度の診察が事態を一気に好転させてくれることさえある。

 あるお母さんから、一歳八ヵ月の男の子が頭を机や床にトントンと打ちつける、いわゆる「ヘッドノッキング」の相談を受けたときのこと。問診に時間をかけて、子どもの立場にたってあれこれアドバイスしたら、なんと、その日から治ってしまったのである。一歳六ヵ月で母乳がやめられないという相談でも、同じことがあった。やはり、子どもはちゃんと聞いている。

 子どもは言葉を理解するだけでなく、人の心情の奥深いところまで正直に感じとっているのではないだろうか。そうやって、言葉だけでなく、心も育っていくのだと思う。
 診察のとき、子どもが大泣きして困った経験をもつお母さんは多いはず。しかし、子どもは決して医師やお母さんを困らせようとしているわけではない。ただ、そのときの自分の気持ちを率直に現わしているだけ。
 むしろ私は、何の抵抗もなく聴診器を受け入れたり、口を開いてのどを見せる子どものほうが、気になってしまう。こういう早くから悟ってしまったような子どもには「大きな声で泣けよ」と声援を送りたくなるのである。

※出典『赤ちゃんが書かせてくれた―小児科医からママへの手紙―』より
(著者 巷野 悟郎、発行人 小山 敦司、出版元 赤ちゃんとママ社)


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