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赤ちゃんの育ち方
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何度か、赤ちゃん連れのハワイ旅行に同伴する機会があった。数日間行動を共にするので、いろいろな育児をじかに見聞きできてよい勉強になった。
そういうとき、到着してから発熱する子どもが結構いるが、大抵は疲れや睡眠不足などによるようで、ひと眠りすると元気になってしまうことが多い。
あるとき、生後十ヵ月の子どもが三十九度の熱を出した。若い夫婦はオロオロしている。診察したけれど特別の所見もなく、熱のわりに元気もよいので、そのまま経過をみることにした。三日目になっても熱は下がらない。両親は部屋に閉じこもったきり。そして、いよいよ帰国という前の日に熱が下がった。
「せっかく高いお金を出してハワイまで来たのに残念でしたね」と言ったら、若いお父さんは涙ぐんで、こう答えた。「いいえ、とてもよい旅行でした。ふだん自分は子どもと接する時間が少なかったので、母親がこんなに大変だとは思いませんでした。熱を出しても仕事にかこつけて母親にまかせっきりだったんです。今度こちらに来て、いやというほど心配させられたので、何だか本当の父親になった気がします」。これには感動した。
子育ては親と子どものごく普通の生活の中にある。子育てに無関心だったお父さんにとって、子どもの発熱は、それこそ意識革命のときであったにちがいない。発熱が父親としての責任を深めさせたのだろう。
日頃、診察室でのお母さんたちの訴えには、医者から見れば、どうしてこんなことで心配するのかというようなこともあり、簡単に解決してしまうことも多い。けれども、その心配は決して無駄ではない。親は子どもの病気を心配しながら、一段と逞しい母親や父親に成長していく。
小児科医は病気を治すばかりではなく、ご両親の成長にも一役かっているのだと思うと、こんな“医者冥利”なことはない。心配して訪れる若いパパママを応援し勇気づけてあげたいと思う。
※出典『赤ちゃんが書かせてくれた―小児科医からママへの手紙―』より
(著者 巷野 悟郎、発行人 小山 敦司、出版元 赤ちゃんとママ社)
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